仮夢庵CarimAn

ドラマ『陳情令』についてアレコレ

藍忘機 《その2》

 

イメージとしては 魏無羨が太陽で藍忘機は月。

 

 

太陽の光で輝く月。月光を人の形にしたような含光君。月の光を表現するのに「皓皓たる」と言うが、皓とは白く清らかなさま。ぴったりだ。
でももうひとつ、英語で狂気を意味するLunatic。これも月Lunaから生まれた言葉。
藍湛の中にも執着という狂気があったのかもしれない。特に魏嬰がいない16年間は。

 

 

 

 


【注意】
自分用の覚え書きなので乱文
多分にキャラへの愛と偏見あり
ネタバレあり
時々BL風味あり
閲覧は自己責任で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


魏無羨に会う以前の藍忘機はきっと、自分はこのまま特に親しい友もなく一生過ごすものと考えていたと思う。
仙と剣の修練に励み、書を読み琴を研鑽し、叔父を敬い兄を助けて姑蘇藍氏の栄えに尽力する。そんな日々がずっと続くと。

父母との団欒という経験がないから、自分が妻子を持つのも想像しづらかったかもしれない。
「他人には触れぬ」「母はいない」「(生涯独り身)それもよい」
新たな他人との繋がりということに関して言えば、もともとは彼に欲や執着があまりなかったはずなのだ。

 

そんな彼の前に魏無羨が現れた。

自分と対等に渡り合える技量を持つ者。
自分にはない自由な発想で善悪の垣根すら越えてゆく者。
お互いを認め高め合える存在。

それだけならば藍忘機の人生の基本は変わらず、ただ「思いがけず良き友を得た」 で済んでいたかもしれない。


けれどその友はあまりにも危うかった。

 

魏無羨の自由は邪道を拓き、その言動は傲慢ともとられ多方面に敵を作る。身の内の邪気も外からの敵意も、いつ彼を滅ぼす元になるかわからない。
心配する自分の声は魏嬰には届かない。


守りたい。


そう思った時、もう藍忘機にとって魏無羨はただの友ではなく、ある意味執着の対象になっていたのだ。


「雲深不知処に連れて帰り隠したい。」


実はそこには魏無羨の意思はない。ただ自分の思いだけ。
一緒に暮らしたこともないのに父親と発想が同じだ。血は争えない。


母とのエピソードを見る限り、藍湛に母親への執着があるのは間違いなさそうだけれど、彼が本当に求めていたのは「自分を守ってくれる優しい母」ではなく、「母を守れる強い自分自身」であり「守るべき何者か」なのかもしれない。


幼いころ大切な母の為に何もできず守れなかった悔い。
ただひとり生涯の知己と定めた魏嬰を守りきれなかった悔い。
そのふたつがシンクロしてより大きな後悔の念が押し寄せる。

なぜあの時不夜天で共に戦わなかったのか。
信じていると、なぜもっと早く伝えなかったのか。
傷を負った腕が折れてでもお前を救うことがどうしてできなかったのか。

 

 

 

それは無理だったんだよ 藍湛。
あの時は魏嬰に救って欲しいという気持ちがまるでなかったんだから。むしろあなたの腕を江澄の剣から守って、満足して彼は墜ちていったように見えた。

一緒に戦っていたじゃないか。不夜天では魏嬰を襲う仙師たちをなぎ払って。そんなにバサバサ斬っちゃっていいのかと思うくらい。乱葬崗では伏魔殿を金光瑶から守ったんでしょう?それで三年も面壁することになったんでしょう?その間もきっと彼を探しに行きたかっただろうにね。

雪が積もるまで跪いたのも、背中に痛々しい痕を残した戒鞭も、あなたが罰をうけるのはいつも魏嬰のため。

あなたの心配が空回りしてすれ違っていたのはあなたのせいじゃない。魏嬰にはどうしても言えない秘密があったから。


藍湛 あなたはなにも悪くない。

 

…と、あの頃誰かが言ったところで何も変わらなかったんだろうなあ。

彼の心に届くのは魏嬰の言葉だけ。

 

だから時を越えて甦った魏無羨を見つけた時、藍忘機は今度こそなんとしてでも守ると決めたのだ。信じていると伝えることを決して躊躇わず。たとえ他の誰を敵に回したとしても。

16年間、悔やんでも悔やみきれなかった。あんな思いはもう二度としたくないから。

 

だから16年後の今は藍湛はきっと幸せなのだと思う。


「悔いがある」

「藍湛 お前はなにも悪くないんだ。」

思わず洩れた本音に優しく応えた魏嬰の言葉が、酔いにまぎれて意識の底に沈んでしまったとしても。

 

同じ言葉を藍忘機こそ魏無羨に伝えたかっただろう。


魏嬰 お前はなにも悪くない。
あの時起こった悲劇はお前のせいではなかった。
そしてあの頃もこれからも、なにがあろうと私だけはお前を信じている、と。

 

 

そしてずっと抱えてきた藍忘機の執着は、自分の思いだけでなく相手の心も汲むことで、確かな絆へと昇華する。
互いを思いやり言葉を尽くさずともわかりあえる、生涯の知己として揺るぎないものへと。

 

 

 

 

 

 

 

 

とか、いきおいにまかせて書いちゃったけどー。
藍湛の執着はやっぱりちょっと知己からはみ出してる気がするわ(笑)

衣装のところで書いたけど、「16年後の藍湛は魏嬰を溺愛している」と監督がメイキングで演者に言っているので、制作サイドとしては別に原作にある藍忘機の想いを隠すつもりはさらさらなく、ただセリフやシーンとしては出さずに判断は観る側に委ねているのだ。
「もし知己越えに見えるならそれはあなたがそういう風に見ているからですよ」という。
ある意味 踏み絵である。怖(笑)

 

でもまあ なにしろ彼らは若いから。

思春期終わりの情緒不安定な年頃に衝撃的な出来事ばかり起こる中、ちょっと気になるヤツがそばにいた。それを運命の相手と思い込む。ありそうな話だ。別に色恋絡みでなくたって運命というのはあるんだし。

心理学者が言ってた。人はドーパミンとその抑止でバランスをとっている。ただ20代前半まではその抑止機能がまだ未熟なのでハイリスクハイリターンな選択をしがちなんだって。若者が時にムチャをするのはそのせいでもあるらしい。
だから仕方ないんだ、藍湛が魏嬰に執着しても。
夷陵老祖魏無羨なんてまさに歩くハイリスクだもんね。
(魏嬰の詭道選択にもこの理屈が当てはまる)

 


でもひとつだけ藍湛は間違ってる。

「魏嬰は悪くない(ハッキリ言ってなくても藍湛絶対そう思ってる)」←これは明らかに惚れた欲目というものだ。
客観的に見てアイツはそこそこ悪いぞ。


彼の一番良くないところは、周囲に理解してもらおうという努力を微塵もしていないところだ。
だから叔父上が「あんな悪い男に引っ掛かって。嘆かわしい。大切に育てたうちの大事な忘機が。」みたいな、まるで娘をごろつきに誑かされた父親のようなことを言うのだ。

44話の乱葬崗や46話の蓮花塢で、あの誇り高き貴公子 天下の含光君が、叔父の嘆息にすまなそうに目を伏せ、江澄に理不尽に罵られ…それもこれもその隣の男のために。むー。


いや、なに目線なのワタシ。親?(笑)

 

もっとも藍湛本人にしてみたら全くもって余計なお世話でしかない。それは理解している。

「私は彼を信じている。今は誰もわかってくれなくても。彼を守れるのは私だけ。」とか堂々と言うんだろうなあ。
それだけ聞くとやっぱり男に騙されてる深窓のご令嬢みたいだけど。いやむしろ守られまくりのすぐ気絶する魏嬰のほうがご令嬢感はあるか。


あ、守られまくり で思い出した。

時々目にする藍忘機をセ○ムというのは確かにうまい喩えだ。
でもセ○ムさんは、うっかり無銭飲食しそうな時に代わりに払ってくれたり、知り合いの子供にあげるこづかいを出してくれたりはしない。

当たり前のようにお財布出すのはどーなのよ。
微笑ましいと笑っちゃうこっちもどーなのよ。

多才な魏無羨の一番の才能は、つい甘やかしたくなるその魅力なのかもね。

 

 


まあ本人が幸せならそれが一番だよ。

と、私の好きな藍曦臣ならきっとそう言う。
そうだよね。とりあえず藍湛が幸せならそれで何もかもヨシとしよう。

 

 

 


 

 

 

 

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